評者はこれまで十数回にわたり漁船で尖閣諸島を訪れているが、野生化したヤギによって食い荒らされている魚釣島の下層植生や堆積する大量の漂着ごみを目の当たりにして対策が急務であることを痛感しているだけに、著者の指摘には膝を打った。また同じく中国の海洋進出に脅かされている南沙諸島では、5カ国が入り乱れて島々を実効支配していることを考えれば、岩礁も含めた尖閣海域を一体として保護区にする意義も頷(うなず)ける。
日本の人口約1億2千万人のうち、離島、つまり、北海道、本州、四国、九州、沖縄本島以外に住むのはわずか70万人ほど。しかし、実は、この70万人が日本の海を支えている。「島々で暮らす人々の生活を守り、無人島もしっかり管理する体制構築を」という主張には、北は択捉島から南は沖ノ鳥島まで数々の島を回ってきた著者の、島々とそこに暮らす人々への優しい眼差しを感じた。「海に守られた日本から海を守る日本へ」。結びの言葉がいい。(海竜社・1680円)
評・葛城奈海(キャスター、予備自衛官)