私が選んだ方は、ご想像の通りである。生活キャリアが長いので、世の中にはお金で片がつくことも多い、それは身をもって知っている。それでも、もし願うことを許されるならば、私は一生、書き続けられる才能が欲しい。
そう言うと、夫はにんまりと笑ってこう返したものだ。
「よっしゃ、わかった。ほな、親爺(おやじ)に買わそ」
まったくもって、ちゃっかりしているのである。ちなみに、義父も今や足が弱っているので宝くじ売り場にたどりつくことができず、私たち夫婦のあくどい企(たくら)みは頓挫した。
夫がなにゆえ自らの運を宝くじに投じようとしなかったのか、それは今もって謎である。(寄稿)