駅舎や鉄道を撮影するときは、いつも少し気を遣う。旅先によっては、撮影を禁止されているからだ。できるだけトラブルは避けたい。あらかじめ案内所などに立ち寄り、写真を撮りたいと伝えることもある。
プラットフォームでカメラを取り出すと、制服を着用した男性3人組がそれを指差しながら近づいてきた。バングラデシュの首都ダッカでも、ダッカ・コムラプール駅(ダッカ中央駅)案内所に足を運んでいる。なんだろうと身構えると、彼らは機関車の運転士だと笑顔で自己紹介した。自分たちの写真を撮影してほしいと言うのだ。
「列車の写真を撮りたいなら、ほら、線路に降りれば見晴らしがいいですよ」。そう勧められ、ホームから線路に降りる。両手いっぱいに荷物を抱え頭の上にまでものをのせた物売りや、大きなボストンバッグを提げカラフルなスカーフをひるがえしながら急ぎ足で歩く乗降客。子どもを抱えた家族連れなどが、ひっきりなしに線路を横切って行く。線路から車両を撮影したことなど、これまでない。それは新鮮な眺めだった。