【書評】『帰ってきたヒトラー 上・下』ティムール・ヴェルメシュ著、森内薫訳 (1/2ページ)

2014.3.30 07:50

書影『帰ってきたヒトラー』上巻

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 ■総統とメディアの共犯関係

 いまもドイツで『わが闘争』は禁書であり、ナチ式敬礼は法律で禁じられている。そこにヒトラーがタイムスリップし、テレビで人気者になり政界復帰する。この取扱注意の一人称小説が大ベストセラー化している。それだけでも衝撃的ニュースだ。

 1945年4月30日ベルリンの地下壕で自殺したヒトラーが「帰ってきた」のは、2011年8月30日である。同じ日、日本では野田佳彦が第95代内閣総理大臣に選出されている。ときに野田首相は54歳、若さに期待が集まった。本書を読みながら、ヒトラーの「若さ」に虚を突かれた。自殺時、つまり復活時のヒトラーはまだ56歳である。フェイスブック愛用の安倍晋三首相より3歳も若い。だからこそ、66年の時空を超えたヒトラーが、ウィキペディアやユーチューブを使いこなしても不自然には思えない。

 この「危険な小説」がドイツでヒットした理由は、ヒトラーを戯画化したからではない。彼の語り口は実にリアルで、人種的偏見の罵詈(ばり)雑言に満ちている。むしろ、本書の批判がヒトラー本人より、ヒトラー・イメージを消費するメディア業界に向けられていることが重要だろう。ヒトラーを発掘して「芸人」に仕立て上げるテレビプロダクションであり、スキャンダル攻撃を仕掛けて逆にヒトラーの知名度を高める大衆新聞である。

ナチズムのメディア戦略を総統の内面から描いて見事

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