【書評】『無念なり 近衛文麿の闘い』大野芳著 (2/2ページ)

2014.3.30 07:31

井家上隆幸・評

井家上隆幸・評【拡大】

 著者は「敗戦直後、急進的な青年の団体が内大臣木戸幸一の命を狙ったが、それは木戸が『和平論の元凶』だったからではなく、なすべき仕事をしない『君側(くんそく)の奸(かん)』だったからだ」と手厳しい。

 戦後、近衛は、天皇退位までも視野にいれ憲法改正案の準備を進めた。もしそれが実現していたならば、70年近くたった今もなお〈戦後〉という、その〈戦後〉はとうに終わっていたのではあるまいか。

 「戦後のメディアが『弱い人間』『すぐに投げ出すクセがある』という木戸がまき散らした文麿のイメージを定着させてしまったが、和平を公言し、果敢に終戦工作に動いた文麿は決して弱くはなかったのだ」という近衛文麿への愛惜と、木戸幸一への指弾を軸とした本書は、鮮烈な〈昭和史〉である。(平凡社・本体1900円+税)

 評・井家上隆幸(文芸評論家)

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