父に仕込まれた家業の誇り 酒造販売卸「豊島屋本店」当主・吉村俊之さん (1/3ページ)

2014.3.30 16:51

「父は私の興味関心を尊重し、我慢強く見守ってくれました」と話す吉村俊之さん(寺河内美奈撮影)

「父は私の興味関心を尊重し、我慢強く見守ってくれました」と話す吉村俊之さん(寺河内美奈撮影)【拡大】

  • 豊島屋ののれんを守る吉村隆之さん(右)と俊之さん=平成23年(NPO法人「神田学会」提供)

 「幼い頃から『家業を継げ』と言われたことはありません。進路や就職についても私の興味、関心を尊重し、何も言わず、我慢強くじっと見守ってくれたことに感謝しています」

 創業は慶長元(1596)年で、約400年の歴史を持つ酒造販売卸会社「豊島屋本店」(東京都千代田区)の16代当主、吉村俊之さん(54)は15代の父、吉村隆之さん(84)について、こう話す。

 俊之さんが家業に入ったのは41歳。その後は口伝の家訓である「お客さま第一、信用第一」を事あるごとに伝えられた。隆之さんは「表情が硬い。もっと笑顔を見せなさい」「杓子(しゃくし)定規ではなく、もっと柔軟に」などのアドバイスをする一方、俊之さんに微発泡生酒や純米吟醸酒、酒かすようかんなど新商品の開発を次々に任せた。

 「細かい部分での議論はありますが、大きな方針は一致している。家庭でも会社でも声を荒らげたことのない穏やかな父です」

 2人はともに企業の研究職からの転身で、老舗の経営者としては異色の経歴だ。隆之さんも41歳で13代目の伯父(隆之さんの父の義兄)から強い要請を受け、葛藤の末、転身した。

父の期待を感じ、自然と継承を受け入れた

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