埋もれた名著で手堅く商い 「学術文庫」相次ぎ新創刊 (1/3ページ)

2014.6.8 12:08

各社の学術系文庫が並ぶ書店の棚=東京都千代田区の丸善丸の内本店

各社の学術系文庫が並ぶ書店の棚=東京都千代田区の丸善丸の内本店【拡大】

【広角レンズ】

 えりすぐりの名著を復刊する「学術文庫」レーベルの新創刊が、老舗出版社で相次いでいる。普通の文庫本に比べてやや高額な値段設定で少部数だが、読書通をうならせるこだわりのラインアップが魅力だ。各社には、どんな狙いがあるのか。(磨井慎吾)

 中央公論新社は4月、文庫の新レーベル「中公文庫プレミアム」を創刊した。5月末時点で、キューバ危機時の米司法長官ロバート・ケネディの回顧録『13日間』や、昭和天皇の侍従長を長く務めた入江相政(すけまさ)の随筆『城の中』など5冊を刊行。いずれも1000円前後で、今後も月2~3冊をリリースする予定だ。

 同社の石田汗太・文庫統括本部長によると、特に力を入れている分野は歴史もので、資料性の高い当事者の回顧録や日記などを重点的に出していきたいと話す。「単にそのまま復刊するのではなく、本の歴史的意味についての解説などプラスアルファを付ける。中公文庫には学術系の埋もれた過去作品も多いので、このレーベルで発掘していきたい」

 装丁にも苦心した。プレミアムの装丁は基本的に通常の中公文庫と同じで、帯だけが違いだ。これは、同社が平成13年から20年までに約190冊を刊行して終了した学術文庫レーベル「中公文庫BIBLIO」での苦い経験を踏まえての措置だという。「BIBLIOは装丁を変えた完全新レーベルとしたため、書店店頭で棚を確保し続けるのが難しかった。そのため、今回は既存文庫内の別ブランドという形をとった」。完全新レーベルを作る場合と比べて、多少安めの値付けができるのもメリットだ。

岩波文庫のようないわゆる『古典』ではない

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