各社の学術系文庫が並ぶ書店の棚=東京都千代田区の丸善丸の内本店【拡大】
いわゆる古典でなく
中公文庫プレミアムが最も意識している他社レーベルが、昨年10月に文芸春秋が創業90周年記念企画として創刊した「文春学芸ライブラリー」。隔月で4~5冊程度の刊行で、既刊には福田恆存『保守とは何か』、内藤湖南『支那論』など、歴史や思想分野の作品が多く並ぶ。中心価格帯は1200~1600円だ。
同ライブラリー編集部の島津久典統括次長は「過去の埋もれた名作を、自社刊・他社刊の区別なく拾っていく。ただ、岩波文庫のようないわゆる『古典』ではなく、文春らしい現代と切り結ぶようなジャーナリスティックなものを選びたい」と話す。最低発行部数が多めに設定されている文春文庫では出しにくく、派手に売れるわけではないが確実に読者がいる本を吟味して刊行していく方針だ。島津統括次長は「最近の文庫は大部数を初速で売り切ろうとするパターンが多いが、学芸ライブラリーは息の長い売り方をしていきたい」と意気込む。
学術系文庫の創刊が相次ぐ背景について、出版科学研究所の久保雅暖(まさはる)研究員は「近年、出版各社が専門的な要素を強めている傾向の反映」と指摘する。「最近の『世界史』ブームにみられるように、教養的な本も売れないわけではない。各出版社で手堅い専門分野の本を重視する流れはあり、そこでしっかり読者を確保していく狙いがあるのでは」とみている。