午後1時46分発のシャトルバスに乗り込んだものの、パリ市内の渋滞にはまってモンパルナス駅に到着したのは午後3時30分。ストの影響だろうか、次の4時04分発の列車は満席で、4時46分発のTGV8437号ボルドー・サン=ジャン行き2等車乗車券を入手した。順調とは言いがたいが、駅で待つのは苦にならない。
ホームには、メタリックなボディが顔を揃えてずらりと並んでいる。1989年に世界ではじめて最高時速300キロで営業運転を開始した、世界に名だたる高速列車だ。そう思うと無骨な顔が頼もしく見えてくる。かつてはキュートなオレンジ色にカラーリングされていたそうで、その姿を見られなかったのは残念だ。
定刻に出発した8437号は、期待に違わずブドウ畑のなかを駆け抜け、午後8時32分。「しょっちゅう遅れる」と言われる路線だが、この日は定刻通りに、まだ明るいボルドー・サン=ジャン駅に到着した。
■取材協力:ボルドーワイン委員会
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。