たちまち吹きつける冷たい強風と乾いた赤い砂。リサと入れ代わりながら、日が沈むまで1時間以上も粘ったが、カンガルーは見つけられなかった。カメラも顔も髪も、口の中も砂でじゃりじゃりしている。ディナー前にシャワーを浴びなくちゃ。
窓を閉めようとすると、リサが歓声を上げた。「見て、あの空!」。振り返ると赤い大地につながるように、紫からオレンジへと空がグラデーションしている。オーストラリアのレッドセンターでしか見ることができない空だ。
ダイニングカーに向かうと「カンガルーを見られなかったそうで、残念ですね」と、トレインマネージャーのソニアが声をかけてきた。
「でも、安心してください。今日のディナーはカンガルーのベーコン巻きです。少なくとも、カンガルーの肉は見られますから」
■取材協力:オーストラリア政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。