「エノキを細かくして表面積を増やせば、エキスを抽出しやすいはず」。19年秋、ろくに料理経験もなく、包丁を握った。
「まな板の上でエノキを切ったらバラバラ。しようがないからミキサーに入れたら、シャキッとしているので刃に絡まず、空回り。水を入れて回したらドロドロになった」
こうしてペースト状になったエノキを煮て、冷蔵庫で保管したら10日で腐ってしまった。「いっそ凍らせてしまえ」と冷凍庫へ。これが功を奏した。粉砕・加熱・冷凍する過程でエノキの硬い細胞壁が破壊され、栄養成分が溶け出す仕組みを専門家に認められた。
昭和22年、中野市のキノコ農家に生まれ、20歳のときにエアコンを使ってエノキの通年栽培を目指す研究会を仲間と立ち上げた。えのき氷は、年間を通して需要を喚起する切り札だ。「キノコを年中、食べられるようなってまだ40年。毎日、食べる食文化を浸透させたい」と話している。