ホームでは、自転車に乗ったまま通り過ぎるランニング姿のおっちゃんや、渋い黄色の僧衣をまとい、串焼きをかじりながらやって来て、ぽいっと竹串を投げ捨てる僧侶らが、自由きままに行き交っている。バンコク市内とは思えないほど、ビーサン着用率が異様に高い。線路を横切る人々の姿も、すっかり見慣れたものになった。
ホーム上に設置された窓口で、きっぷを買う。「バンコク市内では、かなり英語が通じる」なんて言うけれど、ここでは期待に違わず、もちろん英語なんて通じない。始発から終点までの運賃は10バーツ(約43円)。
やがてマハーチャイ線が、朝日を浴びながら入線してきた。メークローン線よ、待っててね。天秤に弁当をどっさり積み重ね、カラフルな綿あめをいくつもくくり付けたもの売りの後ろへ、わたしは期待に胸を弾ませながらに並んだ。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら