ともあれ、1日に3本しか運行しない路線だから、万全を期して、昨夜わざわざ5ツ星ホテルのコンシェルジュに時刻表を調べてもらったのだ。どうやら予定通り運行するらしい。
出発まで40分ほどある。駅弁を食べ損ねた、というか買えなかったので空腹がつのり、ホームの売店券屋台で軽食をとった。会計をしようと呼びかけると「お茶でも飲む? ゆっくりしていけば」と、おばちゃん。いえいえ、この列車に乗るのですよ。きっぷ売り場にいそいそと向かう。するとおばちゃんが背後から、衝撃のひとことを発した。「つい最近、時刻表が変わりましたよ。次の出発は、ええと…2時間半後ですね」。
ええっ!? さすがタイ国鉄。わざわざ調べたのに…と悔やんでも後の祭り。ここで2時間半待つか、それとも炎天下に、もと来た道を引き返して、マハーチャイ駅でバスに乗るか。なんだか眩暈がしそう。日射しはより一層ぎらぎらと輝きを増していた。
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら