衰退への危機感
こうした状況に書き手である作家は、危機感を募らせている。「G2」に掲載した「ルポ 外国人『隷属』労働者」で今年の大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)を受賞したジャーナリストの安田浩一さんは「ここ15年くらい僕らは書く場所を失い続けてきた。生命維持装置を一つ一つ外されてゆくようなもの。発表の場がなければ書き手は減り、全体の質が低下して衰退する」と打ち明ける。
また、「G2」の青木さんは「かつては田中角栄氏や小泉純一郎氏など書くだけで読まれる取材対象があり、書き手についても沢木耕太郎さんのようにカリスマ的作家がいたが、今はどちらも生まれにくい」と、厳しい現状を指摘する。
紙媒体に代わる支え手として期待されるのがネットだ。だが情報消費のスピードが増し、ネットでは時間や労力をかけて取材した記事より、まとめサイトのように手軽に要点を知ることができる記事の方が読まれる傾向にある。「ネットの可能性は否定しないが、ネットメディアの記事の多くは現場に足を運んでこそ書ける身体性が薄く、風景が見えてこない。ただ、今の状況は問題に気づきながら何もできなかった僕らや業界の怠慢でもある。何ができるかを真剣に考えなければならない」と安田さんは言う。