そうやって培っていった音への感性が、後に大きな仕事で生きてくる。宮崎駿監督の「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」で音響監督(本名の林和弘名義)を務め、大ヒット作品を音から支えた。「千と千尋の神隠し」では風呂釜を炊く場所に現れ、石炭を運ぶススワタリの足音を人間に演じさせることを考案した。
「ススワタリは重たい物を運ぼうとするなどいろいろなアピールをする」ため、人工的な音では違和感が出る。だから「人間の声で録って、そこから人間っぽさを消して虫っぽくちょろちょろと動くような音にした」という。「宮崎監督からの注文は抽象的で、それを具体化するのはこちら」。ススワタリもさまざまな注文があったが、試行錯誤を重ねて“正解”へとたどり着いた。
押井守監督の場合は「犬が大好きで、必ず作品に犬を出すため、その足音を録音しに押井監督の家まで行った」という。世界に知られるアニメーション監督との仕事から感じた2人の違いは「押井監督は自分で絵が描けないため、口を使って論理的に指示するが、宮崎監督は絵描きだから紙に描いて直す」こと。これを頭に入れて両監督の作品を見直すと、今までとは違ったところが見えて来そうだ。