鉄道ファンのみなさんは、子どもとどう共存しているのでしょうか…。一応大人としての自制心が働き、絶妙なポジションやタイミングをいつも逃してしまう。そういえば先日訪れた千葉でも、夏休みの少年に遮られ、車両の切り離しを見損ねたのだった…。
意気揚々と先頭車両に乗り込むと、窓にはすでに少年が鈴なりになっていた。ケニアのナイロビから来たというお父さんと息子、その友人だ。はしゃぐ少年らを眺めつつ、お父さんがこう問うた。
「この列車は新しくてきれいですね。あなたの国には、こんなに立派な鉄道はありますか」。何をおっしゃる、こちとら日本人ですよ。と、これは心の声。
「もちろん。高速列車もありますし、何よりいま乗っているこのドバイ・メトロは、日本がつくったのですよ」。
すると会話を小耳に挟んだ少年が、無邪気な大声でこう言った。「パパ、日本って何」「それはこの人の母国だよ」「へー、それどんな国でどこにあるの」「えーっと、…」お願い、もうこれ以上お父さんを追いつめないで。
次にケニアへ行く機会があったら、もっと日本をアピールしよう。思いがけないところで、新しい目標ができてしまった。
■取材協力:ドバイ政府観光・商務局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら