何でも発達障害に結びつけるのは間違いだが、発達障害と診断されて本人の救いになることもある。32歳で発達障害と診断された笹森理絵さんは、田中氏との共著『「大人の発達障害」をうまく生きる、うまく活かす』(小学館新書)の中でこう吐露している。
「上司や先輩職員から叱られてばかりで、とくに自分の理解力のなさには、我ながらほとほと情けなくなりました。子どものころから、『私はなにをやってもダメだ』という気持ちを抱いていましたが、ほかの人には難なくできる仕事が、自分にだけできないケースが増えてきたのです。それどころか、会話すら周囲の人たちと噛み合わず、困り果ててしまいました。(中略)私が生きづらいと感じていたことは、私のせいではなくて『障害』によるものだったのです。(中略)本当に救われる思いがしました」
笹森さんのケースのようにトラブルの原因が明らかになることで、職場や家庭によりよい環境をつくるきっかけになることもあるのである。
いつもギリギリ、遅刻常習者への処方箋
職場に発達障害の人やその傾向が強い人がいる場合、上司や同僚はどのように対応すればよいのか。冒頭の例で処方箋を示してみよう。