妻との生活が長くなり、一応幸せだが倦怠感と退屈感にさいなまれている。安定はしていても、そこに興奮や刺激はない。そこである女性と出会いセックスをすると突如としてテストステロンの影響もあり人生が明るくなった気がして、食べ物の味も復活し、周りが色鮮やかに見えてくる。この状態をバカな男は「恋に落ちた」と勘違いする。
だが、現実的にいえば新しいセックスパートナーのおかげで多少テストステロンの数値が上昇しただけなのだ。こうして勘違いした男は糟糠の妻を捨て、というより妻から捨てられ、子供とも疎遠になり、不倫相手と再婚したりするわけだが、2年か3年もしたら結局同じ状態になり、かつて新鮮だった相手はもはや新鮮ではなくなる。
私たちがこの本を著した主目的はそこにある。人間の性の実態について現実的で正確な見取り図を提示し、中年男性が単なるテストステロンの上昇を恋と勘違いして、つまらない女にひっかかって取り返しのつかない過ちを犯さないようにしてほしいということなのだ。
クリストファー・ライアン 心理学者、調査心理学博士。世界中を巡って得た各地の性文化に対する見識を活かして心理学研究を進める。現在、バルセロナに在住。バルセロナ医学大学講師を務める。医学関連書が多数あり、海外の雑誌・新聞・テレビなどでも活躍している。</span>
(心理学者クリストファー・ライアン インタビュー・構成=タカ大丸)(PRESIDENT Online)