ところが、本人が気づかない。時には、面と向かって言っても、「そうかなあ」と涼しい顔をしている。せっかくの他人という「鏡」を、活かしきれていないのである。
個人だけでなく、日本という国も同じこと。個性において、長所と短所は表裏一体なのであって、良いところばかり、悪いところばかりということはありえない。
日本とは異なる文化、歴史を持つ人たちの心の「鏡」に映った自分たちの姿を、感受性豊かに受け取る。そのようなプロセスを経て、私たちは日本という国のあり方についての「メタ認知」を立ち上げることができるのだ。
2020年の東京オリンピックは、私たちが他人という「鏡」に自分を映してみる、最大のチャンス。短所と長所の両方を、冷静に見つめよう。
(茂木 健一郎 写真=PIXTA)(PRESIDENT Online)