図1 イノベーティブ職の割合(2010年)【拡大】
しかし、忘れてはならないことがある。港区で働いている人のうち、港区に住んでいる人の割合はわずか5.2%しかないという事実だ(数字は、2010年の「国勢調査」による)。つまり、港区で支払われている給与の大部分は区外に流出してしまう。イノベーション産業が集積しているのは「働く」という次元の話だ。これに対して、区民の平均所得が高いのは「住む」という次元に属する。むしろ、イノベーションを生み出す“土壌”となる研究者や技術者、いわゆる「イノベーティブ職」に携わる住人がどれだけの割合を占めているのかのほうが、東京において各区の真の強さを示しているのでは、などと私は考えている。
モレッティ論は“東京”にこそ該当する
では、モレッティ論は、わが国にはあてはまらないのか。その論証は筆者の力を超えているが、ここにもまた見逃すことができないひとつの事実がある。シリコンバレーの面積は、東京23区の5倍以上、ざっと見積もって東京40キロ圏と同じくらいの広さがある。「イノベーション都市=高所得論」を、港区や足立区といった小さな範囲にあてはめようとすること自体、そもそも無理な話なのだ。
逆にいうと、“年収は住むところで決まる”の「住むところ」とは、東京全体を指していると考えると、無理なく腑に落ちてくる。東京に一極集中が進むのは、働く場所、より高い収入が期待できる場所が豊富に存在しているからに違いない。