昨年12月からスタートしたストレスチェック制度。厚生労働省が推奨する簡易調査票などを使って実施する【拡大】
さらに簡易調査票では、恣意的に回答することで結果が容易に予測できるとの指摘もある。負担の少ない部署への異動や休職するために高ストレス者を装う従業員が出てくることも警戒される。
「紙の質問では限界があります。厚労省のマニュアルでは看護師、心理士、保健師らがカウンセリングする補足的な面談も可能としています。詐病も分かるでしょうし、高ストレスでも業務が続けられる人、鬱病手前の人とかも分かるでしょう」
精度は上がるだろうが、本当の高ストレス者が“仮面うつ”を疑われては元も子もない。客観的なデータから問診を補強するものに光トポグラフィー検査がある。前頭葉前部の血流量を測定しグラフ化する検査で3分ほどで終了。健常者、鬱(うつ)病、双極性II型障害(躁鬱病)、統合失調症を波形パターンからそれぞれ判別する。
光トポグラフィー検査を実施している新宿ストレスクリニック(東京都新宿区西新宿)の川口佑院長は、ストレスチェック制度について「健康診断を受けたことが病院に行く動機付けになる人がいるように、メンタルの治療を受ける動機付けには非常に良いと思う」と評価する。
一方で「(ストレスチェックの中で費用のかかる)光トポグラフィー検査を全員が受けるのは難しい」とも。しかし、会社のストレスチェックの実施体制や結果に不安を感じたら、自身で検査を受けてみる選択もあるだろう。
同クリニックの協力を得て、昨年11月に鬱病と診断され、今年1月末まで3カ月にわたり休職した映像製作会社に勤める30代の男性社員の光トポグラフィー検査に密着することになった。