◎スマホが難民のルートを教えてくれる
今、EU諸国は、アラブ諸国からの難民への対応に頭を悩ませています。難民が急激に増え始めたのは、2012年にシリアの内戦が激化した頃から。私はこれを「21世紀のアラブ民族大移動」と呼んでいます。難民たちは、トルコから地中海を渡って、ギリシャに入り、そこからドイツなど難民を受け入れてくれる国へと向かいます。
彼らはプリペイドのSIMカードが使えるスマートフォンを持っています。先に渡った人たちから届く、安全なルートや、受け入れてくれる国の情報を頼りに移動しているのです。ボランティアの充電ステーションやそのエリアで使えるSIMカードを販売する人たちなど、スマートフォンを持って移動する難民を支援する仕組みも出来上がっています。
余談ですが、スマートフォンで情報収集する人にとって、最も便利なのが無料Wi-Fiスポットです。中東やアフリカには無料Wi-Fiスポットがたくさんあります。しかし日本は、先進諸国の中でも無料Wi-Fiが使えるところが少なく、観光客にも不評です。それはなぜか?途上国には、もともと固定電話のインフラはありません。携帯電話の普及と同時に、Wi-Fiの設備も広がっていきました。日本は、固定電話のインフラが整備されていたことで、逆にWi-Fi環境の整備が遅れてしまったのです。
ここまで話してきたことは、直近の出来事も含めすべて過去の出来事です。私は「過去を学べば、現在がわかる」と、考えています。最新の情報を、信頼できるさまざまな情報源から収集する。
そして過去の歴史に照らして、「なぜ、そうなったのか?」疑問を持ち考え続ける。それこそが情報大洪水時代を生き抜く術なのだと思います。
講義のまとめ《情報化社会を生き抜く鍵はメディアリテラシー》
「視野を広げ、世界の多様性を認めながら誤った情報に踊らされることのないようにメディアリテラシーを磨き続けることが大切です」
「情報大洪水の時代。過去を学んで現在を知ろう」
【用語解説】
プリペイドSIMカード
たとえば海外旅行をしている時、SIMフリーのスマホを持っていれば、その国ローカルのキャリアのSIMカードを挿入することで、エリア内はローカル料金で利用できる。プリペイド型SIMカードなら、月額等の基本料金は不要で、前払いした料金がなくなるまで使用できる。
無料Wi-Fiスポット
スマートフォンやパソコンなどの機器を利用して手軽にインターネットに接続できるよう、公的機関や一般企業等が設置している無料の無線LAN。特に自国外では携帯電話の電波を使ってインターネットに接続すると、高額のパケット料金が発生することもあり、無料Wi-Fiスポットが整備されている国はツーリストによろこばれる。日本国内でも設置が進められている。
文/編集部
※記事内のデータ等については取材時のものです。