入社直後は大手並みだったのに… 優良だと錯覚する「キラキラ系ブラック企業」 (3/5ページ)

 私が入手した富士フイルムの大卒総合職30歳のモデル賃金は約600万円。35歳で約740万円、40歳の管理職になると約1100万円、50歳約1400万円、55歳約1500万円と右肩上がりの賃金体系になっている。同社の30代の社員は「基本的に年功序列の給与体系です。入社3年目で残業代を含めて年収500万円程度。役職者になると年収1000万円を超えます。残業は恒常的にあるが、その分有休は比較的とりやすい。新規事業に手を出しているが経営は安定し、福利厚生の手厚いところも魅力ですね」と語る。

 ただし大手ホワイトに入れば楽園というわけではない。日立製作所グループ企業の元人事担当者は「管理職となると年収800万~900万円はもらう。だが給与や雇用が安定しているためにぬるま湯気分にひたり、仕事に対する意欲を失います。そうなると言われた仕事ばかりをやり、能動性に欠けてくるので鬱になりやすい。40歳を超えた社員の5%ぐらいはメンタル不調者でした」と語る。

 また大手ホワイトの中には雇用は確保されるが、50歳過ぎに役職定年で給与が下がるケースもあれば、メガバンクのように50歳前に別会社に転籍させられるケースもある。

 「転籍でも本体の課長なら子会社の部長に異動し、当初の給与は維持されるが、その後は本体にいたときよりも下がります。転籍を打診された日立グループの課長から『2カ月後に娘の結婚式があるので、それまで待ってくれ』と懇願されたこともあります。本体の課長という肩書のままで結婚式を迎えたかったそうです」(元人事担当者)

 ゲーム事業を手がけるスクウェア・エニックス元人事担当者は在籍当時の状況をこう語る。

 「能力・スキルの度合いで給与が上がっていく仕組みはありますが、何歳でいくらというモデル賃金はありません。同じ仕事をやっているとずっと給与は変わらない。入社後数年で格差が開いてくるし、30歳で年収1000万円をはるかに超える社員もいれば、ゲームの動作を確認する『テスター』業務を手がける社員は年収130万円である場合もある。40歳で年収4000万~5000万円をもらっている社員もごく一部いるが、年収300万円程度の社員も少なくない。社員同士もお互いの給与を把握していなかった」

 この証言に対しスクウェア・エニックスの経営企画部広報に事実確認を求めたところ、「当社の人事・報酬制度は、明確なルールとプロセスに基づく能力評価・業務評価を基本としており、年齢は評価要素に含まれておりません」「個別のご質問への回答は差し控えさせていただきますが、相当程度の事実誤認が含まれております」と回答があった。

キラキラ系ブラックとは思っていないというケースも