
※写真はイメージです(Getty Images)【拡大】
私はまず二人に「おめでとうございます」と申し上げたうえで、彼に質問した。
【私】「あなたは正社員ですか?」
【男性】「はい」
【私】「ということは、フルタイムで働いていますか?」
【男性】「はい。9時から18時までです」
【私】「いつからその会社に勤めているのでしょうか?」
【男性】「そうですね、そろそろ4年くらいになりますか……」
そこで私は彼に言った。
【私】「じゃあ、有休取ったらいいじゃないですか」
【男性】「へ?」
【私】「(省略したのがわからないのかと思って)有休、つまり年次有給休暇です。それを取ればいいと思うんですけどね」
【男性】「……ネンジユウキュウキュウカ、ですか? 何すか、それ?」
私は、ずっこけそうになった。
ご承知の方も多いと思われるが、年次有給休暇とは、(フルタイム労働の場合)就業を開始して半年間、労働日の8割以上に就労した労働者が1年に10日間以上の休暇を取得することができ、しかもその休暇については有給、つまり賃金が発生するという制度である(労働基準法第39条)。パートタイム労働者の場合であっても、就労する労働時間に対応して日数は減少するものの、有給休暇を取得できる日数が付与されることに違いはない。
私は彼との会話から、男性がその条件を満たしていることがわかったので、年次有給休暇を取得したらどうかと助言した。しかし、彼はその制度を知らないと言う。
いや、彼ばかりではない。同行している女性も私の説明に深く頷き、「良かったねー、これで大丈夫だよ!」と二人は盛り上がっていた。そして「ありがとうございました!」と私に大変な感謝を示して帰っていった。法律相談としては私はその任を全うしたといえるが、男性も女性も、そのときまで年次有給休暇の存在を知らなかったというわけだ。