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しかし、どんなに自分が願っても、望んでも、他人を変えることはできません。そのできないことをしようとするから、ギクシャクした人間関係になってしまうのです。
このケースでいえば、上司を信頼しなくなる、指示を聞かないようになる、仕事で手を抜き始める……といったことが起こるかもしれません。どれもが上司との関係を悪化させる要素でしょう。では、その根本的な原因は何でしょうか。
答えは、上司に変わってほしいと望んだことであり、つまりは「変えようとした」ことではありませんか。
人間には、自分の努力ではどうにもできないことがあり、それは誰もが経験していることではないでしょうか。
今までに思いを寄せた異性が一人もいないという人は、まずいないでしょう。
さて、そのとき、自分がどれほど相手を思い、相手に自分のほうを振り向いてほしいと願っても、相手にその気がなければ、どうにもならなかったのではありませんか。恋心、愛はもっとも強い情感といえますが、それをもってしても、他人を変えることはできないのです。
その結果、相手をうらんだり、憎んだりすることになります。もちろん、その根本的な要因も、相手を「変えようとした」ことにあるわけです。
どうにもならないことは「放っておく」
禅では、どうにもならないことをどうにかしようとするところに「苦しみ」が生まれるとしています。相手を変えることは、そのどうにもならないことの最たる例なのです。
どうにもならないことは「放っておく」。それが禅の考え方です。人間関係においても、そこが基本となります。変えられないのですから、変えようとなどしない。それが放っておくということです。