わが子を医学部に通わせられる“収入基準”は「本人と情報収集力」次第! (3/3ページ)


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 Cさんの年収は約700万円、妻は公務員で年収約400万円。世帯年収は1000万円を超えるものの、長女の下に高校生になったばかりの長男もいる。近所に要介護状態の両親も暮らしているし、数年前にマイホームを購入したばかりで、そのローンは70歳まで続く。

 長女の医学部進学の意志が固いことを知ったCさんは、浪人した場合のために医系予備校の説明会に参加したが、年間200~300万円の費用がかかるとわかり、「こりゃ、ムリだ」とため息をついた。参加者の親はほとんどが医師のようだった。

 結局、Cさんの長女は、親に経済的負担を掛けさせたくないと、塾などにも一切通わず、現役で国立大医学部に合格。自宅からマイカーで大学に通っている。忙しい毎日を送るが、授業の合間をぬって、時給が高い塾のアルバイトで学費を稼いでいる。

 Cさんは、「ウチのような普通のサラリーマン家庭では、医学部なんて絶対ムリだと思っていましたが、幸いなことに自宅から通える地元の国公立に合格できましたし、6年間の学費も何とか工面できそうです」と話す。

 自治医科大や防衛医大は一定の条件を満たせば学費タダ

 Cさんの長女のようなケースを紹介すると、きっと優秀なお子さんだからと思われるだろうが、実際、その通りだ。

 普通のサラリーマン家庭であっても、お金をかけずに医学部に進学することはできる。地方の公立高校などは、成績優秀者のための補習を積極的に行うなど面倒見のいい学校も多い。また、塾や予備校、大学などには、優秀な学生に対する入学金・学費免除制度がある。奨学金も給付型を選べば返済も不能だ。

 さらに「自治医科大」や「防衛医大」など、一定の条件を満たせば入学金や授業料が一切かからない医学部もある。要するに、子ども本人のやる気と資質、情報収集力で経済的なハンデはカバーできるというわけだ。

 お金をかければ、それほど優秀ではなくても、医学部に進学することはできるだろう。医師になるまでにお金をかけようが、かけまいが、医師としての能力に変わりがないのなら、患者としては特に気にしない。

 しかし、実際、医師になった時に接する患者はお金持ちばかりではない。お金の苦労をしたことがない医師が、経済的に困窮している患者の気持ちにどれだけ寄り添うことができるのか……。医学部を目指す人は、親がどれだけの思いとお金をかけて進学を支えようとしているのか。ぜひ知っておいてほしい。

 (ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子)(PRESIDENT Online)