政府の本格的な議論がスタート 70歳雇用延長、識者に問う (2/3ページ)

 年金制度の改革も必要だ。厚生年金では、受給可能年齢に達した後も働き続けると、収入に応じて給付が減額されてしまう。働くことに罰金を科すような制度であり、早急に改めるべきだ。

 企業は雇用延長で人件費がかさむことを懸念している。一方の働く側も、再雇用で賃金が大幅に下がったり、それまでと違う職場に配置されたりすることで意欲が下がる弊害も起きている。65歳以上も働くことを前提とした賃金体系や職場づくりが必要だ。

【プロフィル】清家篤

 せいけ・あつし 1954年生まれ。専門は労働経済学。2009~17年、慶応義塾長。政府の社会保障制度改革国民会議で会長を務めた。

 □高齢社社長・緒形憲氏

 ■働くから元気になれる

緒形憲氏

緒形憲氏

 高齢社は、定年退職した人を中心に60歳以上の人を企業に紹介する人材派遣会社だ。業務の種類は、ガス機器のメンテナンスやマンション管理、運転補助など幅広く、取引先は約100社ある。

 登録者は年々増えていて、最近1000人を突破した。「働きたい」という気持ちを持っているシニアが多いことを実感する。平均年齢は70.6歳。最高齢は84歳の男性で、倉庫管理の仕事をしている。

 75歳になっても「辞めたい」という人はほとんどいない。働くことで「人の役に立っている」という生きがいを感じることができるからだ。お客さんに感謝され、勤め先の仲間と達成感を分かち合う喜びもある。「元気だから働く」のではなく「働くから元気になる」のだと思う。

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