政府の本格的な議論がスタート 70歳雇用延長、識者に問う (3/3ページ)

 夫が仕事を辞めて家にずっといては、奥さんもうっとうしいだろう。どこかへ出掛けるにしろ、趣味に生きるにしろ、ある程度お金は必要だ。働くことで、自分が自由に使えるお金も増える。

 派遣先の社員にとってもメリットがある。例えば、若い世代が子育てや遊びで土日は休みたいと思っても、休日が書き入れ時の業種では難しい。その点、高齢者は曜日に縛られず、土日出勤をいとわない人が多い。一緒に働くことで若い人に長年培った仕事の知恵や技能を伝えることもできる。

 継続雇用を70歳まで延長する政府の方針に「70歳まで働かされるのか」と思う人もいるだろうけれど、さすがに70歳まで週5日働くわけではないだろう。うちの登録者も週3日勤務が一番多く、残り4日は趣味や家族の介護など、自分の生活に合わせて使っている。「働かされる」と感じる必要はないのではないか。

 政府の方針には賛成だが、一律の定年延長となると、もう働きたくないという人もいるし、企業にとっても人件費が負担になる。希望に応じて働ける形が望ましい。

【プロフィル】緒形憲

 おがた・けん 1949年、前橋市生まれ。東京ガス群馬支社長、栃木ガス社長などを経て、2016年から現職。