新卒が定着しない…宮城・気仙沼の中小企業が採った秘策とは (2/3ページ)

 「入社して大学時代と環境が変わった。普段同世代と話せないのはやっぱり不安。(他社の新人と)会社でこんなことがあったとか他愛もない話をしたり、悩みを打ち明けたりしている」(熊谷さん)。大学時代の友人の多くは仙台や関東で就職したが、自分は気仙沼で働けて満足しているという。

 リクルートキャリアでマチリクを担当するメディアプロデュース統括部事業推進部の原智子さんによると、このプロジェクトの前身は2015年にスタート。東北・三陸エリアの釜石市、大槌町、16年からは気仙沼市も入り、地域の中小の新卒採用・研修を支援する取り組みとして始まった。

 中小で孤立しがちな新人の定着促す

 原さんによると当時、同社の営業担当者が三陸の中小企業を回っていた際によく聞いたのが「新入社員の離職率が高い」という悩みだったという。「地元の大学も県内で就職する学生がすぐ辞めてしまうと話していた。大事な学生をそんな企業に紹介したくないと、大学のキャリアセンターも学生に地元での就職を促していないようだった」(原さん)。

 実際、大卒ではなく高卒が対象だが、宮城県が13年に県内の約1700の事業所に行った調査では10年度に採用された社員の離職率は38%と、いわゆる「3年3割」より高めの結果となっている。

 そこでリクルートキャリアは震災復興支援の一環という意義も持たせつつ、地域の中小が一体となって採用活動を行い新卒の定着率を上げるプロジェクトを提案した。その後釜石市と大槌町の企業との契約は終了したが、気仙沼では18年から「マチリク」という名称に変わって継続している。

 気仙沼では当初の16年では10社、18年は13社が参加している。内容は「リクナビ」や企業説明会などを通した採用活動の支援や企業担当者に対する研修、そして熊谷さんらが受けた新卒向け研修だ。社員の少ない地方の中小では専属の人事担当者がいないことが多く、採用のノウハウを持っていないことが多いことからリクルートキャリアの担当者がレクチャーしている。

 今の学生の考え方や就活市場の状況について説明したり、「連絡してきた学生にはすぐ会いに行った方がいい」と言ったアプローチのコツも伝授したりした。結果、3年間で大卒、専門学校卒、高卒合わせて全社で33人の採用に成功した。

「ここでつながりを育んでもらう」