ただ、原さんが強調するのは採用数よりも定着率の高さだ。9月時点で辞めたのは3人のみ。そこで寄与しているのが、冒頭の熊谷さんが受けた「地域の同期」で集まる研修だという。内容は社会人としての決意や目標を表明したり、働くうちに生じた気持ちの変化を説明するといった大手企業ではオーソドックスなもの。ただ、「気仙沼では規模が小さいため1社で何人も新卒を採用していない企業が多い。同期という関係がなかなか築けないため、ここでつながりを育んでもらう」(原さん)。
企業側にも「受け入れ方」の研修
企業側に対しても、4月に経営者と新人育成の担当者をセットで呼んで「新人の受け入れ方」を研修した。新人に3年後どのようになってほしいのか、そのために今どんな仕事をふるべきかといったテーマについて議論させた。
「例えば今の学生は、昔より厳しく叱られる経験が少ないまま育っている傾向がある。先輩社員とは価値観のギャップが確実にある」(原さん)。特に地方の中小は新卒を採る頻度が多くなく職場に若者が少ないため、このギャップはどうしても埋まらないままになっているという。
熊谷さんが入社した気仙沼商会の高橋正樹社長も「うちは毎年新卒を採っていたが、採用自体何年ぶりという会社もあった。受け入れ側を教育しないと来てもすぐ辞めてしまうことも考えられた」と打ち明ける。「マチリクは街を挙げての採用。こういうやり方に手応えを感じている」と話す。
マチリクは現在、気仙沼だけでなく岩手県久慈市、兵庫県豊岡市の企業でも実施している。都心部の有名大手や先進的企業の事例がよく取り上げられる新卒採用。一方で東京一極集中が加速する中、地方にどう若者を呼び寄せ定着してもらえるかも無視できない問題だ。