「補償する」→「補償はできない」 台風で学校の倉庫が飛び被害、なぜ市は態度を変えたのか (3/3ページ)

倒れた電柱が激突した男性の自宅(提供写真)
倒れた電柱が激突した男性の自宅(提供写真)【拡大】

  • 台風で吹き飛ばされた体育倉庫の屋根(提供写真)

 ただ、公的な支援制度の対象になるには一定以上の被害状況が必要になり、今回の台風21号による被害では適用されない。また、日本では税金による私有財産への支援にはハードルが高く、飛来物の所有いかんにかかわらず、自然災害への備えは「自己責任」という考え方だ。

 なお、「災害救助法」による住宅応急修理費限度額は1世帯あたり57.4万円(平成29年度基準)、「被災者生活再建支援制度」では支援金最大300万円に止まる。

 では民間の保険はどうか。日本損害保険協会によると、自然災害への備えは火災保険が一般的だという。台風などの風水害の補償は火災保険に含まれるほか、地震による被害に備えた「地震保険」は火災保険と合わせて加入する必要がある。ただ、古くからの火災保険の契約内容によっては、補償されないケースもあるといい、契約内容の確認が必要だとしている。

 自然災害の補償制度に詳しい、かがやき総合法律事務所(大阪市北区)の木口充弁護士は、守口市のケースについて「男性は当時、周囲の住宅の瓦などが飛ぶ被害を確認できておらず、その状況で吹き飛んだ体育倉庫の管理について、市の瑕疵(かし)の可能性を主張することはできる」としたうえで、「ただ、裁判では住民側が、市の管理不備を立証する必要があり現実的にハードルが高い」と指摘。現状では火災保険による備えが重要だという。

 災害に備えるには、自治体など公的機関による「公助」に加え、住民が自分で身を守る「自助」、助け合いの「共助」による「地域の防災力」の向上が必要。充実した行政の支援が求められるが、財産や命は自分たちの手で守らなければいけないのかもしれない。