【安西洋之のローカリゼーションマップ】杉山聡美さんはスイスのルガーノにあるフランクリン大学の准教授で、コミュニケーション・メディア論を教える。同大学は米国の大学ながら、スイスにキャンパスがある。学生は米国・欧州・中南米・中東の出身が多い。最近、どこの大学でも多い中国人の学生は殆どいない。
彼女に学生の文化差について聞いてみた。
「米国の大学は1回目のカンニング発覚でゼロ点、2回目に見つかると退学」というが、欧州の大学ではカンニングについて別の考え方をする傾向にある。しかし、同大学は米系の方針を適用する。
こうした差は、例えばお土産についても見る、と杉山さんは話す。
「中南米や中東の学生は、お世話になっている先生との距離が近く、強い親近感をもつようです。それで学期末にハグとか、一時帰国後にチョコレートやコーヒーなどのちょっとしたお土産を持ってきてくれることがあります。もちろんギフトに対する認識の違いもあり、米国では賄賂や何か裏心があると思われがちです」
ということは、感謝の気持ちを表現している中東や中南米出身の学生の振る舞いを、米国出身の学生はなかなか率直に見られないということだろうか。
「このことについて特に米国の学生と話したことはないのですが、うちの米国の学生はある程度文化差を認識しているのではないでしょうか。ちょっとお土産をもらったからと言って、先生達がその学生を特別扱いすることもないので」
出身国の文化で全ては語れないが、杉山さんはおよその傾向を次のように感じている。
「欧州の学生は比較的自立しており、中東の学生は親の影響力が強く、何を専攻するかまで親のアドバイスに従っているようです。目上の人をリスペクトし、信頼できる先生だと感じると人懐っこく慕ってきてくれます。一方、米国の学生は出身地域によってもさまざまですが、その中間ぐらいかな、という気がします」