ローカリゼーションマップ

世界中から集まる学生の「文化差」は? スイスの大学で教える日本人准教授に聞く (3/3ページ)

安西洋之

 スイスと米国の間の差異をどうおさえて、2つを如何に1つの基準にまとめるのだろうか。

 「スイスと米国の差異というより、米国とスイスを一括りで基準としているという感じです」と、杉山さんは米国とスイスの文化を包括したイメージで説明する。フランクリン大学自体が「1つの文化圏」とぼくは想像する。

 それでも、その「フランクリン大学文化圏」に馴染みやすい出身文化の差異は、どうしても消去できない。

 「教える、という点では、基本的にアメリカの小規模私立のリベラルアーツ系の方針です。例えば、クラスサイズ(何百人規模だったりするヨーロッパの授業vs 24人がマックスのフランクリンや他のアメリカの同類の大学の授業)、それにまた関係するのですが、きめ細やかなアカデミックアドバイザー制度、レクチャー方式でないインターアクティブな授業などが特色です。これは、スイスの一般的な大学で教えるのとは随分と違ってきます。ただし、例えば時間の感覚(授業に遅れない、課題提出の締め切りを守る)などでは、アメリカとスイスでは差はないと思います。他方、中東では時間の感覚に文化的違いが認められるので、この点は慣れるまで時間がかかる学生もいます。その場合、アメリカの文化基準が採用されるので、中東の学生がペナルティーを受けてしまいます」

 「下駄を履かせてもらう」という表現がある。本人の意図とは関係のない条件設定で、本人が有利な立場にたつことを指す。ネガティブな文脈で使われることが多い。いや、ほぼネガティブだ。

 フランクリン大学のような教育環境は、それぞれの学生が出身文化から自ずともっている「下駄」を自覚するのは、他人の「下駄」を認識するのと同等に大切であると学ぶのに良いのだろう、と杉山さんの話を伺って思った。

 きっと「下駄」を持っていない人間などいないという発見は、将来に希望を与えてくれるはずだ。

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【プロフィール】安西洋之(あんざい・ひろゆき)

安西洋之(あんざい・ひろゆき)モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

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