やはり注目されるのは個人の力です。通常はこの部分に差がありすぎることが(特にボーカル兼ソングライターと、他のメンバーの差)、往々にしてバンドがうまくいかなくなる、最悪のケースでは崩壊に至るきっかけになります。日本ではオフコースの小田和正や、米米CLUBの石井竜也、LUNA SEAの河村隆一などが分かりやすい例でしょうか。また、スーパースターが2人いる場合も、「両雄並び立たず」になることが少なくありません。ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニーはその典型です。
一方、クイーンの場合、確かにマーキュリーが頭一つ抜けた感はありますが(事実、映画の中でもそれゆえにソロ活動をし、バンドが危機に瀕するシーンが描かれます)、他のメンバーも非常に高い能力を持っており(全員がチャートインするシングル曲を書いています)、またそれぞれに得意技があったことで、お互いが補完し合い、場面に応じて各自がリーダーシップ、そしてフォロワーシップを発揮する非常に良い関係が構築されていました。
誰かが作ったイマイチの曲には、他のメンバーがイマイチとはっきりと言うシーンも印象的です。一瞬けんかになりかけるのですが、その手前で何とか落ち着きます。この良い意味での緊張感が、クイーンの音楽性の高さにつながっていきました。
映画の中の具体的なシーンで、各メンバーがリーダーシップ、そしてフォロワーシップを発揮した典型的シーンを2つ挙げましょう。
シーン1
メンバーが口論する中で、ディーコンが「これが曲だ」と言ってマーキュリーに譜面を渡します。そして「Another One Bites the Dust」(クイーンの最大のヒット曲の1つで、そのベースのリフは音楽史上でもトップ10に入るでしょう)のベースラインを弾き始めます。メイが「それいいね!」と言うと、それまでけんかをしていたメンバーが一気にまとまり、曲を作り上げていきます。ディーコンは最後にオーディションで参加したメンバーで、年齢も最年少です。そのディーコンがこのシーンではリーダーシップをとり、メイや他のメンバーが良きフォロワーシップを発揮していったのです。
シーン2
マーキュリーが遅刻した場面で、メイが「We Will Rock You」のアイデアを出し、他の2人のメンバーも一緒に実験を始めます。遅れてきたマーキュリーは、「なんだこれ?」と最初反応しつつも、曲作りに加わり、クイーンを代表する名曲が出来上がっていきます。これもフォロワーシップが印象的なシーンでした。