【終活の経済学】「おひとりさま」の安心終活術(3)普段の生活に「備え」を (3/3ページ)

川崎市中原区で展開している「暮らしの保健室」
川崎市中原区で展開している「暮らしの保健室」【拡大】

  • 東京労働局にあるハローワーク生涯現役支援窓口のお知らせ
  • 川崎市の地域情報サイト「まいぷれ」
  • 「御用聞き」の古市盛久さん(右)と松岡健太さん
  • ベランダの片づけを行う松岡さん=東京都板橋区

「第5のインフラに」 100円で御用聞き

 電球交換、瓶の蓋開け、重い荷物の移動、草むしり…。高齢になると難しくなる、そんなちょっとした困り事を代行するサービスが人気だ。介護や医療、行政支援の隙間を埋めるような、「5分100円の家事代行」を掲げて注目されている「株式会社御用聞き」。現在、東京23区で提供しているサービスを、2018年中には多摩地域にも広げ、25年には全国の8割ほどをカバーすることを目指す。

 高齢化率が35%を超える高島平団地(東京都板橋区)が、御用聞きの活動拠点だ。夏のある日、ベランダの片づけ作業を請け負った、同社取締役の松岡健太さんに同行した。

 依頼者は1人暮らしの50代男性。障害があり粗大ごみなどを出すのが難しいと、初めて依頼した。松岡さんは世間話も交えながら、植木鉢や粗大ごみなどを仕分けていく。ごみ置き場に運ぶ作業も含め、1時間半ほど。足の踏み場もないほどだったベランダは、すっかりきれいになった。男性は満足した様子で「施設に入った母が残した衣類や家具の処理もお願いしたい」と次の相談も。帰りがけに冷えた缶入り飲料を渡してくれた。

 団地内を歩いていると正面から、松岡さんに笑顔で手を振り、近づいてくる男性がいた。80歳のこの男性は、灯油の買い出しなど何度も御用聞きに依頼しているという。「こういう人たちがいるんで助かるよ、ほんとに」と男性は話す。訪問看護ステーションなどとも連携しながら高齢者を支えていることもあり、御用聞きは地域の大切な存在となっているようだ。

 「電気、ガス、水道、通信に次ぐ第5のインフラとして、安全、安心、安価に、こうした生活支援事業を提供していきたい」と社長の古市盛久さんは語る。

 もともとコミュニティーカフェなど地域支援事業をしていた古市さんが、現在のサービスを本格化したのは16年。電球交換に訪れた高齢女性宅での出来事がきっかけだった。

 ドアが開けっ放しだったので、理由を尋ねると、インターホンが壊れたが、直し方が分からず、友人が訪ねてきたときに気づかないと悪いからと開けていたという。インターホンは電池交換しただけで直った。女性は「ありがとう、ありがとう」と大粒の涙を流し、「これでぐっすり眠れる」と喜んだという。

 この瞬間、古市さんは、ちょっとしたことでも本人には大変な困り事があることに気づかされた。家族やご近所さんに頼れなくなった超高齢社会の今、そうした困り事を解決する事業が不可欠だと考えた。

 利用料は、電球交換のような簡単な作業は5分100円で、粗大ごみ移動などは5分300円、パソコンやスマホの指導などは特別料金。65歳から75歳の女性を中心に、月に200件ほどの問い合わせがあり、リピート率は8割ほどだという。

 社員は古市さんと松岡さんだけだが、大学生を中心に120人ほどが一緒に活動している。当初は板橋・練馬両区で実施していた事業を、18年6月から23区全域に広げた。御用聞きの問い合わせは0120・309・540。(『終活読本ソナエ』2018年秋号から、随時掲載)