【ミラノの創作系男子たち】締切が迫っても焦らず 建築家ライ氏が考える「時間」とは? (1/3ページ)

 建築設計事務所のボスというと、建物の全体イメージを手書きでスケッチし、あとの設計は所員に任せ、時に作業の途中で口を挟む「(部下にとって)コワイ人」というイメージがある。(安西洋之)

建築家のマウリッツィオ・ライ

建築家のマウリッツィオ・ライ

 建築家のマウリッツィオ・ライは、次のように語る。

 「かつてのボスはそうだった。しかし、今はそうではない。所員は部下ではなくコラボレーターであり、彼らと共に作り上げる。共創だ。まっ、しかし所員の説明では納得しないクライアントも少なくない、という実態はなかなか変わらないけどね」と苦笑いする。

 クライアントにはボスが説明する。なぜなら「誰がこのデザインが良いと言うか?」が、施主にとって殊のほか、重要だからだ。クライアントは何が良いか、自身でそう分かっているものではないというのが彼の見立てだ。

 代々使ってきた思い出のテーブルだと大切にしていても、何かの弾みで壊れて廃却処分にする。本人は数日も経過すると、その細工などきちんと覚えていない。こういうシーンを何度も見てきたマウリッツィオは、クライアントが愛してやまないだろうと確信をもてる、クライアントの期待を(良い意味で)裏切るデザインをすることが、建築家の仕事であると考えている。

 彼の仕事の第1ステップは、クライアントの満足する「機能」を考え、それをクリアしてから、じょじょに「服を着せていく」。

 「建物のシンボリックなイメージを、最初にスケッチで描くということをしない。いってみれば、ぼくの作業は数字から出発する。レストランの経営者が50人分の席が欲しいというのに、40席だけしか入らないスペースだったら、クライントが喜ぶはずがない」と雰囲気からは想像しがたい、意外なセリフが出てくる(失礼!)。

 ペンでガンガンに大胆なスケッチを描いていくタイプだと、勝手に想像していた。

というのも訳がある。かつてマウリッツィオから…