言わずもがなだが、老人ホームへの入居は本人と家族にとって大きな決断だ。熟慮を重ね、未来設計の施設を「終の棲家」として託した個人の財産を、毀損させてしまった責任は重い。
2018年の老人福祉・介護事業者の倒産は全国で106件(前年比4.5%減)発生した。介護保険法が施行された2000年以降では7年ぶりに前年を下回ったが、高止まりが続いている。とりわけ「有料老人ホーム」は14件(同133.3%増)と前年の2.3倍に達し、急増ぶりが目立つ。
高齢化社会を迎え、市場拡大をたどる福祉・介護分野だが、慢性的な人材不足など歪みも表面化している。安易な事業計画や杜撰な経営を続ける企業は、遠慮なく淘汰の波にさらされるだろう。だが、抗うすべのない被害者をこれ以上出す事だけは避けるべきだ。
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