ミラノの創作系男子たち

他社のデザインには興味なし 「良いバッグは何年も売れ続ける」 (2/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 彼はバッグをどうデザインするのか? 前提として、同業他社がどのようなデザインの商品を出しているか、情報を入れないようにしている。知ればいつの間にか似た路線にいくのが人の常だ。

 創造は生まれ持った能力や育った環境を含め、人生のすべての経験が浮上してくるものだ。生まれ育ったミラノのテイストが自分のデザインに反映されているとリナルドは自覚している。

 彼はコンピューターを使わずに手でスケッチを描く。

 「言葉でコンセプトを記してから実際に鉛筆を動かすこともあるし、その逆で白い紙のうえでひたすら手を動かしていて言葉が思い浮かんでくることもある。いずれのケースでも、必ず原寸大のレンダリングを紙に鉛筆で描くのは同じで、自分を良い状態におくことに常に最大限の注意を払っている」

 そのために音楽は何でも聞く。本もジャンルを問わず古典文学からSFまで読む。博物館を観賞するのも好きだ。目的もなく、心の赴くままにそうする。しかし、何かをしている時にアイデアがやってくるように待機しているのではなく、アイデアは何かをした後である。

 何よりも優先させるのは、頭のなかにある雑念をとり払い心をリラックスさせることなのだ。

 リナルドはもともと争いで心が乱されるのも嫌いだ。街中で人が言い合いをしていても、なるべく見ないようにする。ただし、彼はただ逃げている性格ではない。

 路上で「正しくない行為」をしている人に注意をしないと、彼の心は落ち着かないのだ。時には意を決して声をかける。他人が財布を路上ですられるのを目撃した時は、危険を顧みず自ら奪い返すべく身体が動いた。数回、そうした経験がある。

 ジレンマだ。だからこそ、心の平安には極力エネルギーを費やすわけである。

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