冒頭に記したように、建築の設計は、その場所の自然環境や文化土壌も把握するのが大事だが、例えば、シチリア島の物件があれば建物を隅々観察し、その土地の資料を読み込むだけでなく、シチリアの料理やワインを口にして土地の人々と語りあう。
レスタウロに要求される情報を取得するためだけでなく、そういう時を過ごすのが好きだからこそ、レスタウロの仕事が楽しい。五感が刺激され、知的好奇心が満たされると自分のビジョンが内から湧き上がってくる。それはきっと、自分の内にある普遍的な価値観に触れるのだ。
「ゼロからアイデアを生み、比喩を駆使しながらそれを人と議論し、コンセプトにするより、自分なりにあらゆる要素をまとめるのが好きなのだ」
パオロはこういうタイプなのだ。
ただ彼も長い間、建築家をやってきて、出身の事務所にあった合理的なアプローチが全てだとは思っていない。使う材料やデザインも、硬いものより柔らかいもの。重いものより軽いもの。エスプリが効いているもの。こうしたタイプに惹かれるようにもなってきた。
その意味で、旅で訪れた東京にある建築物も、とても気に入っている。しかし、言うまでもなく、それを自分のデザインのなかに取り入れるかどうかは別の話になる。
また、自転車でミラノの街を走っていれば、景色のなかに気づくことは多々ある。国内外を問わず、アートの展覧会にはよく出かける。特に現代アートには目がない。文学書を読むのも大好きだ。
パオロは自分で語るほどには、合理的世界に嵌りきっているわけではないように見える。今の世の中には過激で過剰な表現が満ち溢れ、エッジがたっていないとマイナス評価を受けかねない風潮がある。そうした空気を彼は遠ざけたいから、あえて違った「表現言語」と「ライフスタイル」を選びたいと無意識に思っているのではないか。
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【ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。
安西さんがSankeiBizで長年にわたり連載しているコラム【ローカリゼーションマップ】はこちらから。