【高論卓説】ファクトにあふれた国にするために (1/3ページ)

 ■『ファクトフルネス』はメディアへの戒め

 貧困、教育、環境、エネルギーなどの重要な問題について、多くの人々が勘違いしていることを指摘した『ファクトフルネス』をご存じだろうか。読書家として知られるビル・ゲイツ氏が大絶賛し、昨年までに100万部以上売れた世界的なベストセラーである。日本でも爆発的な売れ行きを記録しており、1月に日経BP社が発売した日本語訳本はこれまでに30万部以上も売れている。ビジネス・経済書としては異例のホームランだ。

 本書は、医師・教育者であるハンス・ロスリング氏が自身の経験に基づいて、人々の思い込み、勘違いの数々を論じている。そして世の中のさまざまな事象を見るときに、「10の思い込み」を克服することの重要性を解く。10の思い込みは、ニュースを報じている記者や編集者にとってもグサリとくるものばかりだ。

 ロスリング氏が指摘する第1の思い込みは「分断本能」だ。人間には文化による違いは少なく、実は共通部分が多い。にもかかわらず違いに着目し、「わたしたち」と「あの人たち」という具合に、分断して捉えようとする。たしかにマスメディアは二項対立をつくってドラマチックなストーリーを作りがちだ。経済メディアでは「勝ち組、負け組」という報じ方が一つの定番。中国や韓国について報じるときにも、分断本能のわなにハマりがちだ。

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