第2の思い込み「ネガティブ本能」も、陥りがちなわなだ。世界全体はどんどん「よくなっている」のだが、「悪い」ことばかりがニュースとして取り上げられる。そのため、ワクチン未摂取の子供が増えている、戦争やテロによる被害者は減っていない、という錯覚に陥っている人が多い。
もちろん、悪環境で暮らしている人、戦争やテロの被害に遭っている人にとって「世界はどんどんよくなっている」という言葉は慰めにならないだろう。しかし、だからといって誇張しては駄目だし、事実を正確に捉える努力を怠ってはならない。
第3の「直線本能」は「グラフはまっすぐに伸びていくだろう」という思い込み。人々は、「これまで世界の人口が増えてきた、ということは今後も増える」という具合に過去からの延長で未来を考えがちだ。実際にはひたすら直線的に進むグラフは珍しいのだが、この本能は強力なものがある。
そのほか恐怖本能、過大視本能、パターン化本能、宿命本能、単純化本能、犯人捜し本能、焦り本能を合わせた10の思い込みが、分かりやすく解説されている。そのいずれもメディアが陥りがちなわなといえるだろう。
『ファクトフルネス』は世界を対象にしているが、日本の国内の事象についても「勘違い」は多い。そこで4月1日発売の週刊東洋経済では日本版のファクトフルネスを作ってみた。「日本の生産性伸び率は必ずしも低くないこと」「生活保護費の不正受給を過大視しすぎていること」「日本の社会保障費の増加見通しは誇張されて報じられていること」などを指摘した。