ストレスでも引き起こされる「脳腸バテ」
若い頃に比べて「夏がつらくなった」と感じる30~40代のビジネスパーソンの中には、脳と腸の不調がその原因である可能性もある。資生堂が運営する、脳と腸のしくみをさまざまな角度から解明するサイト「脳腸相関LABO.」が2018年12月、30~49歳の働く女性(167名)を対象に行った調査では、その約半数が「10代、20代の頃に比べ、夏バテしやすくなったと感じる」と回答している。
消化器専門医の大竹真一郎氏は、30代以上の女性が起こしやすい夏バテの背景に、(1)暑さなどによる睡眠不足で自律神経の乱れ(2)「腸バテ」があると指摘する。
自律神経の乱れ
先に触れたように、人間には、意識しなくても内臓の動きをコントロールする自律神経があり、交感神経と副交感神経が常にバランスをとっている。胃腸は、副交感神経が優位になったときに働くため、リラックスしているときに消化が活発になり、逆に、ストレスを感じると交感神経が優位になり消化の働きが悪くなる。つまり自律神経がストレスの影響を受けると、胃腸の働きが鈍くなる。脳の不調が胃腸の不調につながるのはこのためだ。
30代以上のビジネスパーソンは仕事で責任のあるポジションを与えられ、10代や20代に比べ、ストレスにさらされる場面が多くなる。消化器科医の大竹真一郎氏は、「女性は特に、プライベートでも結婚や出産などの環境の変化でストレスが増える」と話している。
「脳腸バテ」
大竹医師はまた、30代以上の女性が起こしやすい夏バテのひとつに「脳腸バテ」があると指摘している。
人間にはそもそも体幹温度を37度に保とうとする働きがあるが、30代を過ぎると室内外の温度に対応する体温調整機能が落ちてくる。女性の場合は特に、男性に比べて筋肉量が少なく熱産生(体が熱を生み出すこと)が上手にできないことから、冷房で体を冷やし過ぎることがある。冷房に加えて、熱中症予防として冷たい水分を摂取すれば体全体が冷えることにもなる。
体が冷えて下痢などを繰り返すうちに、寝不足による疲労も重なり体力がなくなる。結果的に、朝起きられない、集中力が上がらないという「脳腸バテスパイラル」に陥る恐れがあるというのだ。
夏の脳腸バテ 3つの予防法
体を冷やしがちな夏でも体温調整機能を正常に保つためには次の3つを心がけよう。
(1)睡眠をとる
暑さなどで寝つきが悪いときは、眠れないことをストレスに感じず、横になって目をつぶり体を休める
(2)汗をかきやすい体をつくる
夏でも湯船につかるなど、軽く汗をかく習慣をつけて体温調整をしやすい体質をつくる
(3)食物繊維を積極的に摂る
食物繊維を無理なく摂れるきのこや海藻を食事に加える
あなたの夏バテ、タイプは?
「夏バテ」とひと言でいってもその原因は人それぞれだ。訴える症状も、性別や体質によって異なる。この夏を健康に乗り切るためにも、そして効率良く働くためにも、自身の夏バテの“タイプ”を見極めて最適な対処法を見つけよう。