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異次元の速さにドライバー自ら車酔い レクサスのレーシングカーで富士に挑む (2/3ページ)

SankeiBiz編集部

 ハンドルは邪魔にならないよう、あらかじめ上向きに跳ね上げてある。不器用ながらもなんとか無事に座れたのだが、今度はバケットシートがとにかくキツい。172cm、63kgと平均的な体形の筆者でも、シートに収まるとまったく身動きが取れない。ヘルメットを被っていると手元も見えづらい。その影響で、両肩、両脇腹、股下から伸びる5点式シートベルトを自分で装着することができないため、代わりに2人のピットクルーにベルトを着けてもらうことになる。走行中にかかる大きなG(加速度)に備えてガチガチに縛り上げるため、まるで自分の体がシートと一体化したような感覚だ。ハンドルを降ろして固定させたら準備は完了。乗用車を運転するときはヒジが軽く曲がる距離でハンドルを固定するのが理想的だが、車体に大きな荷重がかかるレーシングカーは腕に力を込めて素早くハンドルを切れるように、なるべく体に近い位置でセットする。

 エンジンのかけ方も市販車とは全く異なり、3段階のステップを踏む必要がある。(1)センタークラスターの赤いレバー(サーキットブレーカー)を時計回りに回す (2)その下にあるイグニッション用トグルスイッチをONにする (3)メーターパネル横のスタートボタンを押してエンジンを始動する、といった手順だ。エンジン性能に手を加えていないとはいえ、車内に響くサウンドがRC Fのものよりさらに重厚に聞こえたのは、気のせいだろうか。とにかくドライバーをやる気にさせる痺れるサウンドである。

 圧倒的な動力性能

 メカニックの合図とともにピットを出てメインコースに合流する。富士は朝からあいにくの雨模様。出走するころにはかなり雨脚が強くなっており、運転に支障をきたさない程度にうっすらと霧も発生していた。残念ながら、このコンディションではスリックを履くわけにもいかず、レインタイヤでの試乗となった。

 同乗する大嶋選手のアドバイスに耳を傾けながら、徐々にスロットルを開放していく。「ブロロロ…」と唸るエンジン音は飾りでも何でもなく、ペダルを少し踏んでやるだけでマシンが力強く加速。幅280mmの大きな接地面積を誇るタイヤを履いていることもあり、濡れた路面でも圧倒的なグリップ力を発揮する。ウエットコンディションに最初は緊張気味だったのだが、これで一気に安心感が高まった。

 マシンや路面状況に慣れてきたところで、アクセルペダルに思いっきり力を入れてみる。V8の5Lエンジンが刺激的なサウンドを奏でながら強大なエネルギーを生み出し、後輪で路面を力強く蹴り出すと時速はあっという間に200km/h付近まで達する。まるでA地点からB地点まで瞬間移動をしているかのような速さだ。しかも、激しい雨の中でもスピードに乗ったマシンは抜群の安定感を維持しながらストレートを突き進む。回してなんぼのNAエンジンは5000~6000回転を超えても余裕で加速。いまどき希少な大排気量NAの“体がシートに吸い付く”ような伸び感は、やみつきになる快感を味わえる。

 雨中でも際立つコーナリング性能

 第1コーナー進入時のフルブレーキング下でも姿勢が乱れることはない。約200km/hから60km/hキロまで危なげなく制動する圧倒的なブレーキ性能。そのような状況下でもハンドルを切れば素直にターンインし、再びアクセルを踏めばすぐさまロケットダッシュを見せる。2年前に同じコースをRC Fで走ったときは急激な加速・減速時に車重の重さを感じたのだが、RC F GTコンセプトは軽量化を含めた高性能化でコーナリング時の鈍さは確実に解消されている。もちろん前回と状況は異なるが、走行性能の違いをレインタイヤでも確認できるほどの飛躍を遂げている。

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