新時代のマネー戦略

ムダな保険を選ばない人の思考法 「加入していなければ人生が終わる」 (1/3ページ)

井上信一
井上信一

 たとえ短期の入院でもまとまった額の給付金を一括でもらえる「入院保険」や、認知症と診断されたら一定額の保険金をもらえる「認知症保険」、ケガや病気で働けなくなったらまるで給与等の代わりに保険金をもらえる「就業不能保険」などなど、訴求力の高い保険商品が、毎年のように次々と登場しています。テレビCMや雑誌等で目に触れるたびに、ふと、「自分にも必要なのでは?」と不安に駆られる方も少なくはないでしょう。

 保険期間が比較的短い損害保険なら、期間満了のつど新しい商品に乗り換えることが可能です。一方、いったん契約したら相当な年月加入するのが一般的な生命保険では、新規契約時はもちろん既契約の見直しのタイミングが難しい印象があります。

 ですが、「なぜ保険が必要なのか」という本質的な理由と、「安心できる家計を営み続けるため」という当たり前といえば当たり前の切り口から考えていけば、保障(補償)設計は 意外と単純なものです。

ヒントは企業のリスクマネジメントにあり

 私たちの家計の保障(補償)を考えるにあたり、そのヒントになるのが、企業の事業活動におけるリスクマネジメント論です。そのキホンの「キ」を参考にしてみましょう。

 事業活動では「ゴーイングコンサーン(Going Concern)」、つまり事業を継続し続けることが重要な仮定です。そして、それを阻むいくつもの「想定外の事態(本稿ではイメージしやすく“リスク”で統一します)」が潜在的に存在し、そうしたリスクに対する打ち手を備えておくことが不可欠です。この打ち手として具体的にどのような手段で行うのかの優先順位を決めるために、考え得るリスクを洗い出し、そして個々の評価を行います。

 上図は、事業活動におけるリスクの評価方法を単純化したもので、リスクの発生確率(顕在化する確率)と、仮に顕在化した際に被る損害額の大きさにより、4つのマトリックスに分けて合理的と考えられる打ち手を示しています。

 時計回り順で簡単にみていきます。まずAの 領域にプロットされるリスクは、そもそもそれが生じないよう未然に防ぐ(行動自体の回避)ことを最優先に、少しでも発生確率を減らす工夫(予防)や発生した場合の損害を減らす工夫(軽減)等を行い、A以外の領域への低減化を検討すべきリスクです。Bの領域も概ねこれに準じます。

 しかし、すべてのリスクに対し行動(事業活動や日常生活)を制約していたのではキリがありません。そこでCの領域に該当するリスクはいわば「目をつむり」、いざ生じた際には貯蓄等の自己負担で賄えばよいと割り切って考えるリスクです。

 そして最後のDの領域では、一定の軽減を図ってCの領域への低減化を講じつつも、いざリスクが顕在化すると貯蓄等では到底カバーしきれないゆえ、その甚大な損害額を貯蓄等以外の他者からの補てん(移転・転嫁・リスクヘッジ)で準備しておくのが合理的手段となっています。

 「確率は低いが、顕在化したら損害が甚大になるもの」に備える事業活動のように緻密に数値化して評価することは難しいものの、家計の保障(補償)設計についてもこうした評価方法で考えていけば、自ずと答えがでてきます。

 生命保険も損害保険も、補てんする金額(保険金額)が大きくなるほど、また、そのリスクが起こる確率が高くなるほど、その費用である保険料が高額になります。そして、すべてのリスクに対し保険商品で賄うには限界があるでしょう。

 よって、保障(補償)設計においては、上図のDの領域を優先すべきといえます。つまり、滅多には起こらないかもしれないけれどそれが起こったら家計を根底から崩す可能性の高いリスクです。

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