「死亡」に片寄っていないか 保障・補償のモレに注意
このように考え、改めて現在加入している保険を顧みると、無意識のうちに「(1)死亡」への備えに偏重していることを確認できる方は少なくありません。備えが過大であることが額面通りムダとはいえませんが、その結果、他のリスクへの備えにモレがあるのならば、それは重大な問題となります。
ライフプランも日々の家計のやりくりも、いま得ている収入が続くことが前提で成り立っており、この大前提が崩れると家計はたちまちに崩壊してしまいます。
▼「死亡」か「就業不能」か
例えば、主たる生計者の「(1)死亡」と「(2)就業不能」のリスクを、その後の家族の収入と支出がどうなるかで比べてみると、経済的には「(2)就業不能」の方がより深刻になり得る可能性の高いことが懸念されます。収入が途絶するのは同じでも、かかる支出が異なるので当たり前のことです。就業不能を保障する社会保障や企業保障等は期待以上に厚くはないことも踏まえると、「(1)死亡」に費やしている一部でも「(2)就業不能」への備えに充てることも検討する価値があるでしょう。
▼「損害賠償」のリスクは本当にないか
また、身に降り注ぐ損害額が最も甚大になり得るリスクとして、最悪の場合は億単位近くの額にも及ぶ可能性のある「(8)損害賠償」が挙げられます。日常生活において他人に対する損害賠償責任を負う可能性は滅多にないとしても、いざそれが起こると一瞬にして生活は崩壊します。自動車はもちろん、昨今では自転車を日常的に運転される方はこのリスクへの備えへの意識が高いと思われますが、そうでない方の誰にでも、そして生涯に渡り、このリスクへの備えは必要といえるでしょう。
保険は「費用面」と「収入面」の両方から同時に考える
家計において保険料の負担とは出費のひとつであり、とかく節約できる支出の対象になりがちです。
懸念されるリスクへ備え、そして必要となる保険期間や保険金額を踏まえた上で、少しでも保険料が割安な保険商品を求めることは間違いではありません。ですが、そもそも保障・補償するリスクのカテゴリーが異なる保険商品を比較し、割安だから選び、割高だから選ばないという選択基準は正しいとはいえません。これは保険を保険料という費用の側面からしか考えていない証です。
他方、保険を保険金や給付金という収入の側面からしかみていないケースも多々あります。せっかく加入したのだから、とかく将来的に保険金や給付金をもらえる 機会の高そうなものを選び、そうでないものは避ける傾向があります。
このように「費用面」と「収入面」とを都合よく片方しかみるのではなく、両面を同時に考える姿勢が求められます。
優先すべきは、保険金等を受け取る際に「加入していてラッキー」と感じる程度のものでは決してなく、「加入していなかったら人生が終わるところだった」と痛感するものであることは間違いないでしょう。
【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら