一方で、ラポルタ会長とバルセロナの経営判断を疑問視する声もある。スペインリーグは新たに欧州を本拠とする投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズからの27億ユーロ(約3500億円)にのぼる資金調達を承認したが、レアル・マドリードやバルセロナは反対を表明した。バルセロナにとっては、ファンドからの資金を受け入れればメッシ残留の可能性が高まっていたのにもかかわらず、反対したのは不可解-という意見だ。
反対の理由は、資金を受け入れることで、スペインリーグの介入や締め付けが激しくなり、クラブとしての自由を失うことを嫌ったためではないかとみられている。世界有数のビッグクラブであるレアル・マドリードとバルセロナは今年4月に突如噴出したスーパーリーグ構想に参加を表明した主要メンバー。マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)やACミラン(イタリア)などがサポーターの激しい反発に遭って撤退する中、構想実現に強いこだわりを見せていた。
7月には欧州の裁判所が欧州サッカー連盟(UEFA)による懲戒手続きなどの無効を決定。レアル・マドリードやバルセロナは「今後はUEFAの脅迫を受けることなく前進できる」との合同声明を出していた。トップチームに在籍した17シーズンで、欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝4度、国内リーグ制覇10度など数々のタイトルの原動力となったメッシの放出は、スーパーリーグ実現と天秤(てんびん)にかけ、バルセロナがクラブとしての野望を選んだ結果と言えるかもしれない。
メッシの移籍先のパリ・サンジェルマンはカタールの王族と関係の深い富豪が会長を務める裕福なクラブとして知られる。ブラジル代表FWネイマール(29)、フランス代表FWエムバペ(22)らスター選手も抱える。11日にパリで記者会見したメッシは「チームメートと練習し、人生の新たな章を始めたい」と話した。
一方、財政難のバルセロナはメッシ放出だけでは足りず、ジェラール・ピケ(34)やセルヒオ・ブスケツ(33)らの給与カットも迫られている。「禍福は糾える縄の如し」という。たもとを分かった両者の行く末はどうなるだろう。