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男性育休…法改正後に上司や同僚が「言ってはいけない」こと 無自覚な違法行為がキケン (1/3ページ)

中村薫
中村薫

「ワーク・ライフ・バランス=楽な生き方、甘え」はカン違い

 「仕事をいい加減にして趣味や娯楽を優先するラクで甘えた生き方」がワーク・ライフ・バランスだと勘違いしていたらいけませんので、念のため冒頭にお伝えします。

 ワーク・ライフ・バランスを意識した生き方は、会社のワークと、家族の命や体を守るためのシリアスなライフとをダブル(介護も重なればトリプル)で真剣に取り組まねばならない、人口減少社会のハードな生き方を表現した言葉です。

 命を守るというと大げさに聞こえそうですが、産後1年未満に死亡した女性の死因で最も多いのが「産後うつ」による「自殺」というデータがあります(2015~16年、国立成育医療研究センター調査)。これから家庭を築こうとしている若い夫が妻を亡くしたら…しかもそれが自分が仕事を優先していたことが原因では? と悩んだ場合、夫の精神状態も心配になります。今後は会社の責任も問われる時代に向かっており、上司や同僚も「自分の配慮が足りなかったせいで人が死んでしまったのでは…」と悩み、周囲全体のメンタル低下、会社の収益減少…という悪循環が懸念されます。

 育児休業(以下、育休)制度などを効果的に取り入れることは、産後うつを防ぎ社員の命を守り、自社の存続のためにも欠かせない対応の一つということです。

 今年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月から順次施行されます。今回の育児・介護休業法の改正は、特に男性の育児休業に関する改正やさまざまな義務化が盛り込まれているため、会社としても対応が迫られています。うっかり違法行為をしてしまわないよう、若い社員だけでなく、全ての社員、もちろん上司、役員等も昔のイメージを新しい情報で上書きしておく必要があります。

今回の改正ポイントは育児休業の柔軟化と義務化

 ここでいう「義務化」は会社側に課される義務のことで、社員に義務が発生するわけではありません。また会社が社員に「育休を取得させる義務」ができたわけではなく、育休に関わるいくつかの点が「努力義務」から「義務」になったといった改正のことです。

 ではかんたんにポイントを紹介しましょう。

  • 妻の出産後8週間以内に、夫は4週間までの育休が取得可能になります(以下、産後パパ育休)。休業中も夫が申し出ることで一定範囲内で働くことができます。
  • 育休・産後パパ育休に関する社員研修を行ったり、相談窓口を設けるなど、会社は育休等をしやすい環境を整備する必要があります。
  • 妊娠・出産を会社に申し出た社員に対して、会社は育休制度等について個別に確実に伝え、取得するかどうかの意向を確認する必要があります。
  • 育児休業の分割取得が可能になります。(1)の産後パパ育休も2回に分けて取れますし、従来の「1歳までの育休」も2回に分けることができます。つまり男性は合わせて4回取ることができるのです。女性は2回に分けることもできるため、仕事の状況に合わせてかなり柔軟に育休計画を立てられるようになるということです。
  • 1歳~1歳半、1歳半~2歳まで、保育所に入所できない等の事情により取得できる従来の育休延長制度についても改正され、開始時期を選べるようになります
  • 有期雇用労働者も過去1年以上の勤務歴がなくても育休を取得できるようになります。ただしこれは、子どもが1歳半になった後も引き続き勤め続ける予定の場合です。
  • 社員が1000人超の会社は育児休業の取得状況を公表する必要があります。

※上記は概要です。わかりやすくするために法律用語を一部変えて表現しています。また要件など詳細は省略してありますので、具体的には厚労省のサイトや社労士などに確認し自社に合った形で進めてください。

法改正後、上司・同僚がしてはいけない「こんなこと」

 今回の法改正は小さい会社も含めて経過措置がほぼありません。旧来の「社員の活動時間のほとんどを会社が強制買い取りする」ような働かせ方で、社員が疲弊し心身の健康を損ねたり、自殺してしまったりしては会社にとっても損失です。しかも「人口構造的に少子化の流れを止める最後のタイミングは今しかない」という意気込みで、大企業から中小零細企業まで社員の働かせ方を転換するよう促すのが今回の改正の目的かと思います。

 そのため上記の改正ポイントでも「する必要があります」という記述…つまり義務化された項目が多いわけで、以前はなんとなくスルーしていたかもしれませんが、これからは社員も情報収集しますから、会社が手抜きをすると会社が違法行為をしたといわれるリスクがあります。

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