育休をめぐる社員間のやり取りにありがちな「こんなこと」のうち、言ったりしてはいけないケースをいくつか紹介しましょう。
・「うちには育休制度はない」
これはマズイです。従来から法律で定められた制度ですので会社ごとに採用する・しないを選べるわけではありません。仮に就業規則に書かれていなくても、社員は育休を取得する権利があります。これまでは、権利があっても社内の雰囲気で育休を取りにくいといった現実があったかもしれませんが、そこが改正により「そもそも取得できる雰囲気作りをしなさい」という点が義務になりました。もちろん育休を取りたいと言ったり、実際に取ったりしても不利益な扱いをしてはいけません。
上司として、同僚として、取得しにくい空気を醸し出すような社内文化がある場合は要注意です。
・有期雇用労働者に対して「勤め始めて間もないと育休取れないよ」
従来は育休を取るのに1年以上の勤務歴が必要でしたがその縛りがなくなります。ただし事前に労使協定を締結するなどの要件を満たすことで勤務歴を条件にすることも可能です。一手間かかりますが、有期の労働者を雇っている場合で、就職後あまりすぐに取ってほしくない意向が会社側にある場合は事前の対策が必須です。
・産後パパ育休取得希望者に対して「◯日と◯日は出勤できるって申し出てね」
会社は、産後パパ育休中の男性に対して所定労働日数・時間の半分を上限に働かせることができますが、それは男性が自由意志で「この日のこの時間は仕事できますよ」と申し出た場合に限ります。つい勤務日を指定したくなるかもしれませんが、本来は休業中ですから、いないものと考えなければなりません。その申し出を会社が強要しないよう注意しましょう。
・社員同士が普段から「育休って迷惑だから取得しないつもり」などと発言
これは職場が育休取得を否定する環境になっていると捉えられ、今後法律上義務となる「取得しやすい環境整備」を怠っていることになる懸念があり、上司・役員・社員全体への研修や啓蒙が重要です。
合わせて育休中の社員を補うため特定の社員だけが過剰に多忙になったりしないよう、日頃から複数の社員で仕事をフォローし合える体制づくりなど、なにかのときに業務が滞らない“強い会社”作りが望まれます。
他にも注意点はありますが、ケースバイケースの側面もあり、全てを網羅することはできませんので、自社の社員・風土に応じた課題を整理し企業研修等で全社の意識共有を図ることが大切です。