ところがその副総経理は管理職に昇進していた中国人スタッフほぼ全員を集め、配置転換や制度改革を撤回しない限り従業員全員によるストに入ると経営側に迫ったという。
「ストで銀行や税務署、顧客とのやりとりなどすべてを停止されると、中国事業が立ち行かなくなり、場合によっては契約先から契約不履行で訴えられる」と弁護士と相談の上で判断し、結局、不正を働いたはずの副総経理の処分や制度の改革を見送った。
その後の調査で中国人管理職の大半が不正な裏金ルートにからんでいたことが分った。日本人幹部は、「脅迫に屈したも同然」と悔しさを募らせる。
地元弁護士によると、こうした新手の労使トラブルは「労働契約法」が施行された2008年1月から徐々に浸透し始めたという。労働契約法では、従業員採用時に労使が結ぶ書面による雇用契約は、どちらか一方の意向だけでは変更できない。社内処分などの配置転換、降格や減給も従業員側が拒否すれば法的には認められなくなる。