≪伝統で培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性は広がる≫
世界遺産の富士山を抱く山梨県に、なめした鹿皮に漆で模様付けをする伝統技法「甲州印傳(いんでん)」があります。しなやかな鹿皮に、繊細で立体感のある漆の紋様が独特の輝きを放つ美しさ。使い込むほどに手に馴染(なじ)む深い味わいは、現代の人々の心をも魅了するようです。今回は甲府市で家業を継ぎ、若い感性でオーダーメードの印傳も手掛ける「印傳の山本」山本裕輔氏を訪ねました。
400年以上の歴史がある山梨県の伝統的工芸品「甲州印傳」。古くは戦国時代、武田信玄が印傳の袋に甲冑を入れ持ち運び、そこから郷土品「信玄袋」の名が広まったという逸話もあります。江戸時代には、巾着や煙草(たばこ)入財布などの袋ものとして、小粋な柄とともに人々に親しまれ、「東海道中膝栗毛」にもその名が登場しています。この一風変わった名の由来は、寛永年間に来航した外国人が、幕府に献上したインド産の皮の装飾品に由来するとも言われています。